すでに金沢

モナドリーム/単夢譚_35

街を歩いている

誰かを追っているのか
誰かに追っかけられているのか
夜であったような気もするし
昼のような気もする

そのうちに
街はどんどんと複雑に
入り組んできて
天地左右上下の区別も
わからなくなってきた
橋がある
しかしそれは
紙クズでできた橋で
歩くとぐさぐさと
崩れてゆくのだ

いつのまにか
標高500メートルは
登ってしまっていたようである
ここで落ちれば
完全にOUTだ

しかも
恐怖にふるえる足元をよくみると
この辺一帯をおおっている
なにものかが
今私の足をも
ひちゃひちゃと
おおいつつある

ぞびん!
たる寒気にかられ電撃一躍
私は橋から逃げだし
近くのスラムの一軒に
とびこんだ

そこは
もうずっと寝たきりの中年女と
その娘二人の女三人暮らし

風呂場を貸してもらい
全身を浄めようとするが
水道から出てきたのは
真赤な液だった

きけば
ここはもうすでに
金沢であるという