父の出現

モナドリーム/単夢譚_19

昔の祇園祭では
鉾を、猪や象に曳かせていた。

鴨川のバックマーシュの草原を登ってゆくと
彼方に揺れ動く鉾はなんであるか? 

続いてくるのは岩戸山だが
これはなんとも無骨な木造建築。

突然、岩戸山が回転を始めると
曳っぱっていた猪が
こちらへ襲いかかってくる。
しかし
その背後にいるのは
無性人間なのだ。

象の背後の無性人間は
疲れ切って
人身御供にされてしまった。

彼らは特殊な身分である。

彼らは精神感応によって
その精神を動物と一体化する。
肉体は、その間
グタリとホコの前面または内部に
ひっかけられている。

各面に頂点が少し窪んだドーム状の突起を持つ
正六面体の箱。
普段はこの箱に無性人間を詰め
これを首にかけて歩く。

滝を背にして追いつめられた無性人間。
彼らは動物の脳となる。

私は
バックマーシュの大草原を駆け戻ると
ホテルの十三階で荷物をまとめ
ベランダ伝いに脱出を図る
フルシチョフもニクソンも
みなこうやったのだ。

このホテルのベランダは広い。
所によっては幅十メートルもある。

そこへ
父が
現れた。